戦後紙芝居の金字塔、右手和子先生のご命日に祈る
紙芝居の実演家として頂点を極めた右手和子先生がお亡くなりになられたのは平成23年11月17日です。そのご命日の今日、右手先生が眠る大田区内の真言宗の名刹「密蔵院」を参拝しました。実は、所用で墓参が難しいと判断して1週間前に訪問したのですが今日も、お参りが出来ました。
今から15年ほど前になりますが、図書館に勤務していた私は退勤時間になると紙芝居舞台を持参して地域の保育所や老人施設を巡回し紙芝居を上演していました。図書館が本の貸し出しや「読み聞かせ」活動だけでない、図書館の可能性、新しい魅力づくりを考えたかったのです。その折に右手先生の「紙芝居クリニック」に申し込みました。会場には、講師の著名な紙芝居作家二俣英五郎先生と右手先生の二人がいらっしゃいました。私の準備した演目はもちろん、二俣先生の代表作「たべられたやまんば」です。
16場面の尺長の作品、波乱万丈のハラハラ・ドキドキの紙芝居に演者の私も緊張しましたが、評価役の右手先生は私も気づかずに演じたある個所を、大変評価して下さいました。しかし、その後に主催者側のある方から質問が。「紙芝居の裏書を全部読んでいない」「また付け加えている箇所がある」「そのような演じ方は許されるのか?」と。
その時に、右手先生は明快にお答えくださいました。「演者のキシモトさんは高齢者施設でお年寄り相手に紙芝居を続けている」「ただ読んでいると、対象者によっては飽きる人もいる」「省略し付け加えていても、全体の流れや雰囲気は変えていない」「よいのではないでしょうか」と。優しく温かい援護射撃。私は深く感謝し、感動して先生のお人柄にしびれました。
私と紙芝居の本当の出会いは、この時から始まりました。子どもだけでないお年寄りも、大人も子どもも、その心をつかむ”紙芝居の半径3メートルの宇宙”は必ず時代に貢献できる、と私は確信しました。そして故・鷲塚師匠との出会い・・がありました。
密蔵院は穏やかな秋の日差しが溢れています。寺の前を流れる疎水の水がキラキラと光ります。日々新たに、年を重ねながら出会いの感激を忘れずに新しい決意で、出発進行~!