演じてみよう紙芝居

教育紙芝居と街頭紙芝居の演じ方

 教育観芝居はどこでもいつでも手に入ります。お近くの図書館には沢山の紙芝居がみなさんを待っています。しかし街頭紙芝居となると、ほとんどは“絶滅種”。一部を除いては演ずることはもちろん、見ることも難しい状況です。一部と言うのは、「黄金バット(ナゾー編)」「丹下左膳(第5巻・宝壺の卷)」他は大空社で読み方のテープが付録でセット販売されていました。これらの他は、手にすることが難しい状況です。
 身近な教育紙芝居は、裏書きもしっかりしていますが、街頭紙芝居は裏書きがほとんど書かれていなかったり、読み方が違っていたりで当時の紙芝居師も裏書きを参考にしながら、ほとんどを自分なりの読み方でアドリブを加えて実演していたと思います。

紙芝居のお客さまは誰でも結構 画像の説明


紙芝居の正しい読み方はある?

 それに反して教育紙芝居は、しっかりと作成されています。むしろ、その裏書き通りに読むべし!という読み聞かせのセオリーとも言うべき主張を強くされる方もいらっしゃいます。
 紙芝居を自分なりの解釈で順番を変えて読んでしまう、名作のストーリーを変えてしまう等は論外ですが半径3メートルのお客様に合わせて、理解しやすい紙芝居の演じ方を工夫することは許容されるのではないでしょうか。

観客に合わせて工夫しよう

 紙芝居は演じられてこその存在感と魅力。その演じ方は、演じ手になればこその楽しさです。かって、大手紙芝居出版社の幹部の方が言いました。「紙芝居の作成には多くの関係者の努力が結集されている」「紙芝居の裏書きの地の文やセリフの一言一句は著者の思いが込められている」だから勝手に変更しないで、という主張です。それはその通りで依存はありません。しかし、認知症高齢者やさまざまな方々を対象にして実演してみるとよくわかりますが、通常のセオリーで読むことだけでは、通じない場面によく出会うのです。


お客様の集中をいつも意識 立ち身の方にはテンポよく


会場の状態、お客様の立つ・座るを意識して演じましょう!

 例えば左の写真は横浜市内でただ一か所の「養護老人ホーム 白寿荘」(昭和36年創立 神奈川県匡済会)での紙芝居。会場は立派な大舞台の付いたホールでお客様は全員が着席でした。みなさんの集中度を高めるために、この日は紙芝居舞台を使用せずに紙芝居を手持ちにして実演しました。
 
 本来なら紙芝居舞台は紙芝居の必需品ですが、状況によっては手持ちで演じることもアリなのです。台湾台北市を巡業した際には携行する荷物の関係で紙芝居舞台を現地に持参できませんでしたが、同様に手持ちの紙芝居で実演できました。

 また右側の写真は、お客様が「立ち見」をされています。このような時は、テンポよくスムースに紙芝居をすすめることを心がけます。読み方も少し早口で、「あ~もう終わっちゃった」というスピード感を少し意識しながら私の場合には実演しています。

言いかえる、省略する、一部加える

 工夫の範囲はおのずから限度があることは当然です。作品を壊さない範囲で、「言いかえる」「省略する」「一部加える」を工夫してはいかがでしょうか。特に問題となるのは「一部加える」ではないかと思いますが、
ケースバイケース、難しい問題です。
 例えば6代目桂文楽の十八番の「舟徳」を故古今亭志ん朝師匠が演じた際、「舫(もやい)」を「船を係留する舫(もや)い」、とわかりやすくひと言添えて噺を進めていました。そのような配慮は必要かもしれません。


街頭風に演じる紙芝居

 小型の舞台で演じられることの多い紙芝居ですが、「言いかえる」「省略する」「一部を加える」ことの工夫に加えてもう一つ大切なことは、「声色」と「声の強弱」私は工夫しています。
 こうした工夫があれば、幼児向けの紙芝居でも大人が楽しめます。そして低学年向きの紙芝居が高齢者に楽しい紙芝居となります。「おもしろかった」「よかったよ」「なつかしかった」そう言って下さる方々の声を聞くと小さな紙芝居に不思議な魅力と存在感が込められていることに気が付きます。


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マイ紙芝居で演じよう

 もうひとつ、一味違う演じ方でお薦めなのは「紙芝居舞台」の横に立って直接観客の顔を見て実演を進めること。舞台の後ろで紙芝居の裏書きだけに集中しないと観ている人の気持ちがよくわかります。「受けているのか」「受けていないのか」と反応を確かめながらの紙芝居は一味違う楽しさです。
 そこまでの余裕がないよ、という方にはマイ紙芝居を選ぶことをお勧めします。自分の好きな、楽しい紙芝居を選んでその読み方を少々重ねて修練します。紙芝居はほとんどが4の倍数です。つまり12枚か16枚で構成されています。ですから筋書きも主なセリフや地の文もすぐに記憶に残ります。紙芝居を自分のものにして読むことができれば、もう自信満々で実演ができるというものです。




面白顔で演じる時は紙芝居に隠れて

 こんな時には紙芝居の後ろに隠れて読んで、と教えて下さるのが教育紙芝居の第一人者で幼児教育研究者で私の大好きな一番尊敬する右手和子(うてかづこ)先生です。こんな時、とは特に極端な声や表情で読むような作品の場合。それに伴い演じ手の顔が結果として「極端に面白い顔」になってしまうと、お客様が紙芝居画面を見ないで、演じ手の顔を見てしまう、というものです。本当にそうですね。私はいつも面白い顔して読むと言われますので、そのお話をお聞きした時には「これからは隠れて読もう」と思ったものでした。




いかがですか、紙芝居。あなたの声をお聞かせ下さい!


  • 「紙芝居を(読み手が勝手に)変更しないで」という気持ち、わからなくはありませんが、ふと「平家物語」のことを思い出しました。あれも「平曲」と言って琵琶の弾き語りとともに源平の合戦を伝えるものですが、みんなが思い思いに弾き語って、のちの世代に伝わるうちに、現在「平家物語」って、70種類ぐらい伝わっているのですよね…。ですから現在の「紙芝居」も、底本がしっかりしていれば、現場でアレンジすることはOKだと思います。そこの区別は、大切ですし、底本をいじらなければ、適度のアレンジはよいのでは?むしろ、それが「ライブ」の魅力だと思います。 -- 村田健次郎 2022-10-06 (木) 18:12:04
  •  介護の仕事をしています。80歳、90歳の方が矍鑠とされている方がとても多おります。
    やはり、思い出すのは子供の頃のことだったり、若かりし頃の活躍されていた頃のことです。
     最近はカラオケでもなかなか古い歌がなく、ましてや時代劇中の挿入歌を見つけることは難しくなっております。せめて紙芝居で時代劇を…の思いがあり閲覧させていただきとても参考になりました。       益々のご活躍をお祈りいたします。 実現したいと思っています。 -- 国分 礼子 2013-06-22 (土) 10:08:43