なつかし亭を見る

6月17日(日)の「港北ほのぼの寄席」は回を重ねて第10回。会場は多くの参加者で満員盛況でした。身近な地域で気軽に、本格的な古典芸能をこれからも提供していきます。

節目の今回は、入船亭扇里師匠の落語と遠峯あこさんのアコーデイオン漫談が登場。


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 扇里さんは横浜市栄区で幼少期を過ごし、現在は港北区在住の噺家さん。師匠は古典落語の大御所「入船亭扇橋」師匠です。厳しい芸の世界で修行を重ねて2年前に真打。落語協会でも若手本格派のお一人です。

 遠峯あこさんは郷愁誘うアコーディオンで民謡を中心に楽しいオリジナル曲を軽妙な話術で披露する芸人さん。桜木町の野毛・日の出町界隈でも知られた魅力あふれる芸人さんです。


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 扇里師匠の最初の演目は「ぞろぞろ」。善良な高齢夫婦の日常と信仰するお稲荷さんの不思議なご利益が、なつかしい江戸情緒とともにやさしく話に溢れます。本当にいい噺です。

 遠峯さんはおなじみ野毛山節でスタート。明るく艶のある声は、寄席でもどこでも通じる存在感です。圧巻はイタリア民謡の曲で京浜東北線の膨大な駅名を読み込んだ「私の京浜東北線」。他にも「相鉄線」「京浜急行線」のバリエーションもあるとか。とにかく面白い、明るい、楽しい“歌手”でした。もちろんアコーディオンの演奏も個性的。名前の「あこ」は、アコーディオンの「アコ」のこと?と後で気が付きました。「アコ」さん、とっても面白かったよ!


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 扇里師匠の二席目は人情噺の名作「ざこ八」。人生の重荷を背負う男女の機微を若くさわやかな語り口で披露されました。お聞きすると師匠の入船亭扇橋さんの持ちネタをひとつひとつ大切に受け継ぎ、自身でつむぎ出すことに取り組んでいるとのこと。人間としても本当に好感のもてる青年です。「芸はひとなり」と。これからも人生修業の階段を登りながら、多くの出会いを芸に活かして!と心から祈りました。応援します、頑張って!

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 恒例の「福引大会」。今回の目玉は扇里師匠の真打披露の記念品。扇橋師匠の筆による「扇里」の名前いりの扇子が10本。当たった方は大喜び。その他にも福祉作業所の「手作りコースター」やお茶や海苔など。港北演芸倶楽部のはかりや珠江さんの提供品が抽選会を盛り上げました。当選された方、おめでとうございます。



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 落語の世界は磨き抜かれた伝承の話術に支えられています。しかしその語り手の個性は噺の魅力を決める大きな要素。その意味で入船亭扇里さんの円満であたたかい魅力は人情噺にぴったり。おなじみの“打ち上げ会場”でも人柄が醸し出す温かいトークが五臓六腑にしみわたりました。

一席目の「ぞろぞろ」は落語の名作で紙芝居(汐文社刊、渡辺享子先生・画、三遊亭円窓・監修)にもなっています。画を担当された渡辺享子先生は私の尊敬する“飲み友達”(先生、ゴメン!)。「(あの作品は)紙芝居にするために大変な時間と作業があったのヨ」と直接お聞きする機会がありました。扇里さんの「ぞろぞろ」はその円窓師匠ゆずりの噺です。それに独自の工夫をして噺を仕上げています。本当に楽しかった。面白かった。感謝です。師匠!