平成30年10月23日

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一里塚 富士を仰げば 雲の峰       辻  蝶子 


それぞれの夏の空があります。振り返ればつい昨日の、昭和の戦争を伝える夏空があります。炎天下、汗と苦労が身を光らせた親たちや、先輩たちの勤勉の空。そしてグランドに再起を誓い、あおぐ青春の空があります。病床で自分と新しい命に向き合い、感謝に気づき胸を熱くする空があります。さまざまな夏の空。それぞれの夏空。でも、よ~く目を凝らし、耳を澄ませば、そこには秋を伝える息づかい。やさしい風の息づかい。


   思いきり 両手で握手 雲の峰       石川  茜


   サングラス かけても白し 雲の峰     多田  浩


    雲の峰のみが 見えいる 病臥かな      宮地 恒子


    ボール蹴る 少年一人 雲の峰        山本 末子 
 

 

 体力のない幼児や高齢者。病める者に、とりわけ夏の暑さは厳しさを増します。明治、大正、昭和を生きた西東三鬼、飯田蛇笏、村上鬼城の句は国語の教科書の中の忘れられない記憶の一句です。年を重ね、今また時代を超えたその新鮮な句に再会します。”自分が自身の人生の主人であり続けたい!”と思い詰めた、遠い青春の時代に出会う夏です。


    反骨や 遠き己を 夏の雲        国分 葭穂


   算術の少年 しのび泣けり 夏      西東 三鬼


   念力の ゆるめば死ぬる 大暑かな     村上 鬼城


   大空の 見事に暮るる 暑さかな     小林 一茶

  

 いよいよ夏の雲の出番です。積乱雲、積雲・・。いつも前かがみで猫背のオジサンも、梅雨の合間にのぞく夏空には空を見上げてみます。サァ!出番です。街頭紙芝居は、今ではほとんどの演者、お客様そして演目の紙芝居が滅失して、その多くは雲流れる果てにおわします。梅雨が明け、夏空の下の緑陰でカチ、カチ、カチ~。拍子木が響く時、時代を越えて消えていった多くの関係者、お客様、先達たちに感謝を込めて街頭紙芝居が始まります!


   これしきの 握力夏の 雲つかむ      川上 登喜子


    炎天下 一歩踏み出す 勇気かな     武内 久子


    どの道も 炎天なりし 五十歳     岡  節子


  

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