平成31年3月21日
弛(ゆる)みなく 地球はめぐり 冬至かな 宮澤 文代
”身ひとつの置き処なき炎暑かな”(倉橋智恵子)そんな夏が過ぎ、”日めくりを一気に剥(は)がし 夜の秋”(讃岐 節子)。その待ちかねた秋から、季節は冬に移ります。人生を四季に例えると冬は終末期でしょうか。”終活”へのしつらえ、そのようなイメージがあるかもしれません。でもそれは違います。冬こそは出発の時、エネルギーを蓄え充満させて爆発へ点火する一番大切な季節です。冬も嬉しいです。歓びです。感謝です。冬に出会える幸せ、それをかみしめ味わい、そして思い切って冷たい空気を胸にいっぱい吸い込みます!あ~ぁ、あったかい。
穏やかに 部屋の隅まで 冬至の日 川上 まつえ
五臓六腑 検診受くる 冬至かな 川村 ひろし
行く年 しかたない 寝ていよう 風 天
立小便 する気も失せる 冬木立 風 天
”行く年”とその次、”立小便”のブルッと震える句の作者”風天”は”フーテンの寅”、故・渥美清さんの俳号です。浅草のストリップ劇場での経験、辛酸を熟成し芸人としての花を咲かせました。決して忘れることのない”冬”の季節に培ったやさしさと暖かさが溢れています。街頭紙芝居も社会の底辺の方々により支えられてきました。昭和の時代を縁の下で支えた人々、その人達が高齢化し平成の時代も変わろうとしています。でも冬の季節があるからこそ、春を迎える喜びがあります。そして居住まいを正し、蓄えるエネルギーの脈打つ力を実感しましょう。冬に負けない力です!
人の数だけ 晩年がある 冬の梅 角 光雄
親に似し 孫のしぐさや 冬ぬくし 東 明美
おでん鍋 先ず大根に 箸を差し 山根 繁
めぐる季節、ひと時ひと時が真剣な人生の舞台です。身の丈に合った、でも少しでも背伸びした自分を目指したいです。ささやかな街頭紙芝居、でも鷲塚師匠や梅田先生や先達がせいいっぱい生きた昭和の記憶を、平成からその先の世代に伝えていきたいです。
大根で 団十郎する 子どもかな 一 茶
出港の エンジンの音 冬ぬくし 田中 美智子