平成30年7月18日

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紫陽花の 紫の濃き今朝の雨     島方 峰庵 


 桜からアジサイにめまぐるしく季節が変化します。季節に合わせて時代も、少しづつ足早に駆け抜けていきます。5年前の5月下旬、自宅で逝去した父の出棺を見送ったのは雨に映える”紫陽花”でした。雨を含んだ風が梅雨を運び、やがて初夏の日差しは私達を厳しい夏へと誘うことでしょう。肌を焼く暑さにも”まあ、いいか!夏も楽しい!”と言葉にしてみます。亡き父がそうであったように、”従容”とすべてを受け入れる。できそうでできない、でもそうすることで心は新しい”化学反応”を起こします。はるかな道の先のほのかな光、ホタル火のようなやさしい光の先。そこで、きっと輝くまぶしい光芒に出会う、ひそやかな希望と決意とともに六月に向かいます。


   紫陽花のいろ移ろいし あしたかな     猪俣 洋子


   ひたすらに雨に打たれし七変化       小長井 井蛙


   あじさいや あしたのために靴みがく    福留 むつ


   紫陽花を青を信じて 八十路来る       坂井 美恵子  

 

 無我夢中で走り出した4月。そして春の嬉しさに少しだけ気を許して、ふと足元の薄闇に足を取られた自分に気が付いた5月。今、実感のある一歩が踏み出せる六月かもしれません。梅雨も嬉しいです。意外に梅雨に似合うものの一つが万年筆。湿気のためかインクが紙になじみます。昨年秋にイタリア・デルタ社の万年筆を買いました。地中海の太陽のように輝くオレンジの軸が嬉しく、しばらく枕元に置いてやすみました。家族は、”全く、こどもみたいねェ~”と。その後デルタ社は倒産し、価格は高騰して私には入手できなかったと思います。梅雨も、嬉しい季節です。


   六月の万年筆の におひかな        千葉 皓史


   傘一本 重荷の余生梅雨に入る       守田 椰子夫


   古道具 潔く捨て梅雨に入る        森 かつ子


  

 いよいよ夏の雲の出番です。積乱雲、積雲・・。いつも前かがみで猫背のオジサンも、梅雨の合間にのぞく夏空には空を見上げてみます。サァ!出番です。街頭紙芝居は、今ではほとんどの演者、お客様そして演目の紙芝居が滅失して、その多くは雲流れる果てにおわします。梅雨が明け、夏空の下の緑陰でカチ、カチ、カチ~。拍子木が響く時、時代を越えて消えていった多くの関係者、お客様、先達たち。その方々に感謝で街頭紙芝居を始めます!


   西郷の銅像の上 夏の雲           寺内 やすお


   父の背の 遠くなりたる雲の峰      天野 久子


  

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