平成29年5月31日
早春の 光となりし 乳母車 松村 弘子
立春が過ぎ、弥生三月に暦は廻ります。でも雪やあられの舞うこともある浅い春です。その中で、一歩一歩と春への前進を感じます。やさしい陽光の中を進む若い母と、幼子はまだ長めの影を曳きながら、ゆったりと堅実に、たじろぐことなく少し冷たい早春の風の中を進みます。やさしく大きな海のような世界に抱かれている二人です。
早春の 海へ手を振る 駆けてふる 猪又 秀子
冷たくもよし 早春の 風ならば 東出 泰二郎
春の卒業、入学、就職をひかえた三月。買い揃えた、足になじまぬ革靴をなでながら出発の心を整えます。”卒業”は一区切りのゴール。でもそれはまた次のスタートです。ひとつづつ節を重ねて”生命”をつなぐ決意もあらたな出発です。それでは、シュッパツ進行~!!
まだ足に そはぬ革靴 春浅し 鈴木 由美子
身の丈に 余る傘さし 入学す 山口 梢
一年生の クレヨンの匂いの 桜です 滝沢 忠義
人前で 泣かぬ子となり 卒業す 野坂 民子
あっぱれの 大若竹ぞ 見ぬうちに 小林 一茶