平成29年12月5日
門を出て 故人に逢ひぬ秋の暮 蕪 村
ひと昔前、横浜最後の街頭紙芝居師、故鷲塚隆師匠にお会いした時のことです。人なつっこい笑顔、渋くてよく通る声、テンポの良い会話に魅了されました。その後、お手元の貴重な街頭紙芝居を使用させていただきたいと懇請する私に「お金儲けに使わないで!」「世のため人のために使って!」とおっしゃり、快諾してくださいました。まぶしい光を浴びたように心が高鳴りました。それから何度も”秋”が過ぎました。街頭紙芝居が似合う季節、それは秋かもしれません。夏の炎天の路上や屋外の暑さは厳しく辛いものですが、吹き抜ける秋の風は大道芸人の背中をやさしく押してくれます。そして今年も、なつかしい鷲塚隆師匠のご命日がめぐってきます。
秋の朝 素肌の富士がそこにあり 島本 倭子
砂の如き 雲流れ行く朝の秋 正岡 子規
空を見て雲見て 秋の来てゐたり 郡川 宏一
秋の夜長は読書や勉強の時間。精一杯取り組んで、悪戦苦闘してそして遠いゴールに向かって走ります。人生にゴールです。時には歩いてもいい、休んでもいい。でも一歩でも前に進みたい。”人生の勝利”とは達成感。だから努力重ねれば人生の喜びはひたひたと、ひそやかに心に満ちてきます。頑張ろーう!と心に言い聞かせ、また繰り返し言い聞かせます。頑張ろーッ!!と。
透明な 秋が欲しくて背伸びする 水落 蘭女
テスト開始 鉛筆の音秋深し 井上 春世
ふむ、 真っ直ぐに立っているぞ秋 正田 吉男
明け方の 富士の全容鳥渡る 廣野 恭子