平成28年6月16日
富士白くすそ野は木の芽曇りかな 太田 臥牛
桜が日本列島を駆け抜けて春から初夏へと季節は移りゆきます。四国遍路の季節になりました。「お遍路」は、経験者にお聞きすると四国八十八カ所を「同行二人」と書かれた菅笠をかぶり、白装束に手甲脚絆、金剛杖を携えて数珠を手にして全行程1400キロに及ぶ霊場を巡拝する弘法大師空海の足跡をたどる過酷な修行、と。人生の「生老病死」を超えて、生きることと死を迎えることの意味を”体感”する旅なのかもしれません。無慮数千年の昔から命をつないできた私達。私自身も数十回目の春を迎えて遍路の旅の彼方に思いを巡らします。そしてまたまた、めぐり来た春に心から合掌です。
鳥に問い花に問いつつ遍路かな 大木 あまり
何も彼も忘れ遍路に出でにけり 鵜飼 政一
お遍路が一列に行く虹の中 渥美 清
遍路の旅の道の辺には樹々が”芽吹き”、花が彩りを添えてお遍路の背中を押してくれます。弘法大師様が錫杖(しゃくじょう)を手にして”巡錫(じゅんしゃく)”したお姿にならい、私も世のため人の為にささやかでもお役に立ちたいです!
空あかり幹にうつれる木の芽かな 室生 犀星
かくれんぼさびしくなりし木の芽かな 日野 草城
神々の降臨の山芽吹きけり 上川 美絵
心持ちは心持ちとして、次々に寄せ來る年齢の波、”寄る年波”。でもふと目にする山も花もそれぞれが、何かしら楽しく見えてきます。
職退けば故郷のやま芽吹きをり 斎藤 升八
老人とは幾つからかな木瓜(ぼけ)の花 笹本 美津子
記憶力雲散霧消木瓜(ぼけ)の花 沙羅 杳子