平成27年8月1日
8月の炎天。向日葵の花が秋の準備を始めています
シリーズの映画48本に主演し、大衆スターとして映画史上に残る「男はつらいよ」の渥美清さん。彼には俳句をこよなく愛するもう一つの顔がありました。10年前に68歳で死去するまで200作以上の句作を遺しました。渋谷の下町育ちの私は、街頭紙芝居と露店のテキヤの啖呵(たんか)が大好きです。映画を見るたびに”広尾商店街の縁日”にいつも出かけた少年時代を思い出します。”薬研堀の唐がらし売り””焼け跡の万年筆””バナナのたたき売り”そして”ガマの膏売り”。いかがわしくてアヤシい世界。故・坂野比呂志さんの大道芸レコードそのままの世界がありました。すぐ身近に”寅さん”を見て育った私です。その渥美清さんの俳号は「風天(ふうてん)」とのこと。どこへ風に乗って飛んでいくのかわからない”赤とんぼ”みたいなオジサンです。
行乞(ぎょうこつ)、漂白した種田山頭火のうしろ姿
赤とんぼじっとしたまま明日どうする 渥美清
好きだから強くぶつけた雪合戦 同上
おふくろ見にきてるビリになりたくない白い靴 同上
映画のロケで旅、そして人生のひたむきな旅
村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ 渥美清
花びらの出て又入るや鯉の口 同上
蓋(ふた)あけたような天で九月かな 同上
私生活を隠してひっそりと、がんで逝去・・
土筆これからどうするひとりぽつんと 渥美清
お遍路が一列に行く虹の中 同上