令和2年3月11日

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大根を さげて富士山 見てゐたり    新田 次郎


紙芝居の世界で私淑した故・右手和子先生のゆかりの場所、「子どもの文化研究所」が創立50周年を迎えて記念イベント”講演とトークの集い”が11月30日に東京大学弥生講堂一条ホールで開催されました。講師は諏訪中央総合病院名誉院長の鎌田實先生。90分の講演の中で自身の出自を赤裸々に語ってくださり、「生きるってすばらしいー命・子ども・自由が大切」をテーマに、今年の五山賞特別賞の受賞作品、紙芝居「かまた先生のアリとキリギリス」の実演をはさみ”命の授業”が開講されました。先生は1歳10か月の時に、大資産家の父母が離婚して別の夫婦の元で育てられます。新しい父は、小学校卒の貧しい東北のリンゴ農家の末っ子で生活のため上京。母は当時難病とされたリウマチ熱に罹患します。しかし病院のベッドではミノル少年をいつも無条件で抱きしめてくれました。息子のすべてを肯定し、すごいね!と受け入れてくれた。それが崩れそうな一歩手前でミノル少年を支えてくれた・・と。



海に出て 木枯らし 帰るところなし   山口 誓子



悴(かじか)める 手は憎しみに 震へおり  高浜 虚子

   
 

18歳の夏休みに父に泣きながら”勉強させてください”と頼んだ。バカヤロウー!勉強なんかするな!誠実に生きれば貧乏でも生きられる!・・それが父の答えだった。

好奇心でパンパンになった少年は向学心を抑えられず、図書館の本を読み漁り、夏の終わりに、もう一度父に勉強させて欲しいと懇願した。背伸びをするな!誠実に生きればよいのだ!父の峻烈な拒絶に、思わず飛びかかって少年は父の首を絞めた。二人とも泣きながら我に返り、父は少年に口を開いた。「自由をやる!」「これからは自分の責任で生きろ!」「自分は、病気の妻の看護でお前の面倒は見れない」と。貧しい中で、重病の妻を抱えてもただ誠実を看板にして、人生を生きるしかすべのない父。幼くして数奇な人生を生きた少年は長じて、困っている人に手を差し伸べる医師の道を選択して人生を切り開いた。


葱(ねぎ)白く 洗ひたてたる 寒さかな    芭蕉


悲しみに 喜びに寄る 大炉(たいろ)かな   山本 作次朗


生涯の 居を得て熱き 根深汁(ねぶかじる) 大須賀 浅芳


”命の授業”の後半は、人生の100年時代をどう生きるか?がテーマです。フレイル(筋肉の虚弱)にならないように日常の運動を紹介。お金を貯める貯金よりも大切なこと。それは自分の筋肉をしっかりと維持・向上させる筋肉の「貯筋(ちょきん)」。もう手遅れだ、と思うような年代の人がやり始めることで、”行動変容”が起こり時代が動き始めるという、やさしく強いメッセージが送られました。


この山に 道あればゆく 小春かな  高木 晴子


落葉(おちば)して 木々りんりんと 新しや  西東 三鬼


中年の 華やぐごとく 息白し    原  裕

     


  

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