令和1年7月1日
ひと休み ひと休みの杖 さくら咲く 近藤 美知子
弥生三月は卒業の季節です。学業を終えた安堵感と惜別の感情、行く末への期待と不安が溢れます。学生や青年だけでなく高齢者も同様です。冬を超えた喜びと春への期待、そしてと少しの戸惑いを感じます。でも毎年決まって、そんな私達に強い応援団が登場します。”桜の花”です。大樹でなくともささやか一枝、一輪の花が励ましてくれます。決してああきらめない、負けない。桜の花とワン・ハートで、たじろがずひたむきに前に向かいます。春の風を味わいます。
一を知って 二を知らぬなり 卒業す 高浜 虚子
烈風の中 卒業の門を 出づ 伊東 みちを
下駄箱を 綺麗に掃除 卒業す 江成 幸子
地球儀の 海を見てをり 卒業子 朝倉 和江
退職を 生徒に告げず 卒業歌 結城 節子
家族が職場を"卒業"しました。五十路を越えて新設の高校に異動して次代を担う生徒達の成長を見守りました。そして自身も成長させていただいたと思います。常に二番手に控えて表面に立つヒトを支え、目立たずとも一朝(いっちょう)事あるときは敢然として事変に向かいました。頼もしく、強くやさしい姿に敬服していました。数年間は私が毎日昼食の弁当を作りました。NHKの人気番組「サラメシ」には登場できませんでしたが、それに負けない弁当と自負しています。厳しい学校現場で弁当は午前中の疲れを癒し午後への活力維持と脈打つエネルギーのみなもとです。大事なサポートと勝手に思い込み、弁当作りの自画自賛です。でも卒業式には次の人事異動の都合で出席できなかったため「お祝い電報」を送りました。短い一文ですが、読ませてもらうと何か私自身にも伝えてくれているような気がします。そうか、時は今か!私もあらためて、卒業生と一緒に合点した思いです。若いモンに負けずに春風の中を出発します。ありがとう!ご苦労様でした!
第○期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます!
F高校でK校長先生を先頭に過ごした3年間は、
みなさんにとってかけがえのない時間でした。
みなさんは遠い昔、生命誕生の“輪”につながる命を受け継いで
今日があります。46億年の時をめぐって、今あるみなさん!
どうぞ一日を、ひとときを大事に新しい一歩を踏み出して下さい。
自分を磨き、強くやさしい心を育て、家族と周囲の方々を大切に!
時は今です!春風の中をスタートして下さい。
"花の雲 鐘は上野か 浅草か 芭蕉"
いつ見ても、何度見ても桜には華やかさに加えて緊張感、ドキドキ感が漂います。だから映画、映像の背景にも「街頭紙芝居」にも桜は登場します。昨年、平成30年11月に横浜市有形民俗文化財に追加指定された2千余巻の街頭紙芝居の連載時代劇「風流葵日記~夜叉頭巾」は江戸向島の花見の場面から始まります。風に揺れる桜の一枝に、般若の面をかぶった中元姿の怪しい男が短冊を結びます。そこには何やら場所と時間が記されておりましたが、その短冊を次々に覗き込む怪しい浪人者や謎の美女・・。さあ、物語の展開は?当時も今も、上野や浅草は桜の名所ですが、向島は昭和20年代に故・鷲塚隆師匠が街頭紙芝居を実際に上演されていた場所でした。不思議な出会いに感謝しながら、また春風の中を私も巡業にスタートします。
黒髪のころ 懐かしや 桜咲く 近藤 松子
ふり向けば 妻と娘がいる 桜かな 坂本 まもる
さくら咲き 旧師に友に 逢ひたしや 斉藤 ヨシ子
ひとひらが 彗星となる さくらかな 高岡 慧