平成25年12月28日
詩人の高村光太郎は”冬の詩人”と呼ばれるほど多くの冬の詩を作りました。光太郎にとっては冬は明日に向けるエネルギーの蓄えであったり、人生の悲しみや苦難を超えて、飛び立つ勇気を表徴しています。この詩に触れる時はいつも秀麗な富士の山が心に浮かんできます。
冬が来た
きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹(いちょう)の木も箒(ほうき)になった
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
(高村 光太郎)