令和7年6月30日
山桜 雪嶺天に 声もなし 水原 秋櫻子
凍える五臓六腑にしみわたる春が来た!部屋の厚いカーテンを開き春の風を呼び込むと、忘れていた小学生の”春”を思い出す。東京港区の小学校では4年生から図書室が利用できた。よく借りた本は”少年少女日本史談シリーズ”。その7巻「幕末の風雲(浅野晃:著・偕成社)」だった。黒船来航から明治維新までの事件を人物中心に描く血湧き肉躍る、日本史物語だった。何回も借りるのを見て父は新品を買い墨で名前を書いてくれた。定価230円のその1冊で、歴史がもっと好きになった。
おもしろや 今年の春も 旅の空 芭蕉
飛ぶように 宝の春の 過ぎゆけり 望木 俔東子
白き皿に 絵具を溶けば 春浅し 夏目 漱石
叱るまい ただ抱きしめて 春の宵 佐藤 正子
一瞬の 生命いとほし 桜咲く 碓氷 すすみ
一を知って 二を知らぬなり 卒業す 高浜 虚子
今、世界中で理不尽な力で”歴史”が作られる現実を見る。ウクライナではロシアとの戦争で4万6千人以上が死亡したという。4万6千回以上の葬送の儀式と別れがあったに違いない。中東のガザ地区でも同様だ。心が押しつぶされそうになる。荒廃した街の復興や数十万人に及ぶ負傷者や家族の心が安らかであるようにと祈る。日本でも自身の幼少期は日常のすぐ隣に戦争の傷跡があった。路上で募金を募る白衣の”傷痍(しょうい)軍人”、駅の片隅の戦争孤児の姿、そして過酷な体験談が忘れられない。
子の逝きて 桜に色の なかりけり 國保 八江
鳥に問い 花に問いつつ 遍路かな 大木 あまり
夫ありてこそ 朝桜 夕さくら 大原 良江
合掌の 指が脈打つ 花の寺 小原 きよ
親離れ してゆく子らの背 花吹雪 風岡 俊子
2023年2月3日、横浜港をのぞむ”パシフィコ横浜”で横浜市海外交流協会主催の一時避難・在日ウクライナ人支援のイベントが開かれた。そこで誰もが知っているウクライナの国民的民話「てぶくろ」の紙芝居を上演した。参加者も参加して日本語のリレー上演は大人も子ども楽しい時間となった。最後に、なつかし亭が愛用している“拍子木”を贈呈した。それから2年。カチ、カチ、カチ!あの拍子木が故郷で響き、安らぎと平和を呼ぶ春の風となることを心から祈っている。”至心に心を込めた祈りは届く!”と信じ、”Think Global Act Locally”。(地球規模に想いを拡げて足元に取り組む!)私にもできる!私にしかできない!・・・その一歩を、春に踏み出す。
ひとひらのあと 全山の 花吹雪 野中 亮介
こみ上げて来る ほほゑみや 花吹雪 安積 素顔
蝶の宅配 大字(おおあざ)菜の花 小字(こあざ)菜の花 平島 陽子
お地蔵様 菜の花百本 たてまつる 田中 徳子