梅雨の合間に出会った二つの紙芝居

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 7月の梅雨の合間に紙芝居の最高峰「五山賞」と右手和子先生ゆかりの「右手賞」、「堀尾賞」の紙芝居3賞授賞式が学習院大学中央研究棟12階で開催されました。「五山賞」は年間の印刷紙芝居で最高の評価を受けた紙芝居が受賞し、今年で57回目を数えます。「右手賞」は、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師です。イソップ童話「ありとキリギリス」を独自の解釈で寛容と支え合いの物語に仕立て紙芝居の原作者として受賞しました。
 私にとって印象深いのは今年の「堀尾賞」です。神奈川大学非文字研究センターが受賞しました。今では目にできない国策紙芝居を収集しその研究を通して公開講座、シンポジュウムで”戦時下の大衆メデイアとしての研究”を進め「国策紙芝居からみる日本の戦争」を上梓しました。戦争遂行を目的とした国策紙芝居、とひとくくりされ悪しき紙芝居の典型にもたとえられますがその時代、その瞬間には無名の演じ手により演じられ市井の人々の心をつかんだ紙芝居です。街頭紙芝居のオジサン達もその中にいたと、お聞きします。その方々にも光を当てていただいた思いです。
 一方国策紙芝居の戦争責任追及!という責任論を声高に言い立てる人もいますが偏狭な主張です。小児病的なステレオタイプの主張です。今回の堀尾賞受賞に私は最大限の拍手を送ります。その研究を在野で支えられた高瀬あけみ先生他の研究者の皆さんに心からの感謝です。おめでとうございます!
 さてその国策紙芝居の画家として知らぬ者のない「小谷野半二」は没後の平成15年に「エメリアンのたいこ」(童心社)が出版されています。先週の7月12日(金)、親子のグループの会でこの紙芝居を演じたのですが未就学児が小谷野の絵に見いり、そして太鼓のリズムと音に激しく反応しました。まさに時代を超える紙芝居の一つだと気が付きます。小谷野半二の国策紙芝居の作品は多くありますが「空の軍神加藤少将」が印象に残ります。
 旧陸軍の名戦闘機「隼(はやぶさ)」をかって”加藤隼戦闘隊”として戦史に登場する主人公は自ら壮烈な戦死を遂げます。その紙芝居を描いたのは35歳前後の年齢でしょう。水墨画のような筆使いの作品です。”隼戦闘機”から”エメリアン”への変遷は想像するしかありませんが本人の内的な変化と時代の要請でしょうか。”エメリアン”では、最後に兵隊たちは逃亡し雲散霧消し、太鼓も川に捨て去られます。私はそこに、昭和から平成そして令和の時代に流れる庶民の日常の重さ、記憶と時間の歴史の足跡を感じるのです。

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