なつかし亭を見る

なつかしの名画「紅孔雀」、おもしろかった!

 昭和29年1月からNHKラジオで連続放送された「紅孔雀」は同年、東映で1作から5作まで映画化されました。出演の中村錦之介、東千代之介、大友柳太郎などは当時の子ども達のヒーロー。私も大熱狂した一人です。芸能誌やブロマイドもない時代、当時のヒーローが登場するのは“メンコ”の表紙でした。
 この白黒映画が、東京神保町シアターで7月20日まで日替わりで上映されているのです。

さくら通りの路地を入るとシアター 東千代之介と高千穂ひずるのポスター

7月16日は、完結篇を含め上演

 第4作「剣盲浮寝丸(けんもう ふしんまる)」、完結編「廃墟の秘宝」の2作同時上映でした。正義の味方「白鳥党」と悪の軍団「されこうべ党」の息詰まる対決。互いに知らず兄弟、肉親が相食む悲劇、そしてどんでん返しの鮮やかな結末。本当に、楽しいですね。こうした展開がどこかにあったかな?と考えるとそれは「街頭紙芝居」でした。

街頭紙芝居と「紅孔雀」は同じ昭和の“ゆりかご”

 観客はほとんどが、高齢者の方々。夫婦であり、おひとりであり思い思いにハラハラドキドキのなつかしい時代を映画から感じ取っていたのではないでしょうか。それは街頭紙芝居の世代でもありました。
 物語では苦難の末にやっと、最後の「紅孔雀の秘宝」を手に入れた「白鳥党」の那智の小四郎と浮寝丸達。しかし、この財宝は「白鳥党」のみが私するのではなく、京都でこの資力で貧しき人々のため、明るい社会を作ることに役立てるのだと一同は心を合わせ、声を合わせるのです。みんなのために世のために役に立ちたい、という時代の風が感じられます。

映画の最後には観客から大きな拍手

 そして、この大団円には、神保町シアターの観客が期せずして惜しげのない拍手を送ったのです。映画の最後に拍手!このような場面は今では聞いたことがありません。私を含めて、見た目には高齢者でもさすが“昭和の時代の子ども達”です。あらためて、昭和の良き時代、人をつなぎ時代をつなぐ大切さを痛感します。館を出ると神保町の歩道は灼熱の照り返しでしたが、それとは別に胸熱く、神保町シアターを後にしたのです。